★ 私儀、甚だ多用にて ★

第十四章

★ 1 ★

 深夜に、鐘が繰り返し鳴るのを朧げに聞いた。今日は元日なのだ。
 いい天気だ。きっと初日の出も盛況だったろう。と言ってももう陽は高く、とうに九つは過ぎていた。国倫はのっそりと布団から起き上がると、誰も居ない寮の部屋でぼんやりと障子の外を見る。裏庭の灰色の木々は、痩せた手足をちぢこまらせていた。
 普段はこの六畳の部屋に大の男が三人押し込められている。文机と燭台と本を入れる行李が三つずつ。今の時期だと陶器の火鉢が一つ。ここに三人分の布団を敷くと寝返りもままならない。
 同室の二人はまだ若く、しかも源内が衆道の男だと噂に聞いたらしくて妙によそよそしい。年末年始は儒学の授業は無く、二人は帰省していた。寮全体もひっそりと静かだ。残っている学生は、源内のように実家が遠方の者か、事情がある者か、よほど勤勉な者だろう。
 去年の正月は田村邸に居候していたので、先生の家族や他の書生と初詣に出た。田村家の次男・新次郎は赤子ながら浅草寺の人込みに動じず、国倫の方が人の多さと出店の華やかさに心奪われて石畳に蹴つまずいた。元長は子供のように凧を欲しがり、お参りの後だと藍水にたしなめられた。
 奥方がお参りする時に国倫が気を効かせて新次郎を抱くと、赤子は今までニコニコしていたくせに火がついたように泣いて、おまけに『じゃああー』と大量に放出しておむつと晴着と国倫の袴を濡らした。「そげん嫌わんでも」と嘆く国倫に皆が大笑いして、賑やかな初詣だったと記憶している。今年の参道では、新次郎はもう抱かれずに歩いていることだろう。
 今年は国倫は初詣にも出かけなかった。頭が重いのは昨夜酒を呑みすぎたからだ。暮れに志度から着物や仕送りが届き、悪所へ遊びに行く金はあったが、その気になれなかった。部屋でかいまきを被って勉強しても火鉢だけでは寒く、酒の量が過ぎた。
 志度の平賀家では、今年は四人で初詣へ出たことだろう。荷物に混じった義弟・権太夫からの手紙が、姪の誕生を知らせていた。
 里与だってもう十六だ。母になっておかしい年齢ではない。鳩渓も頭ではわかっていたと思うのだが、例によってひどい落ち込みようだった。国倫にとっても、決して面白い出来事ではなかった。自分の都合で婿をあてがって結婚させたくせに、可愛がった妹が孕んで出産したと聞くのは、気分が滅入った。
 李山が自嘲気味に国倫をからかう。
『里与と権太夫は、家を継ぐ為に結婚したのだからな。男子が産まれるまで、まだまだヤりまくるさ』
「・・・。」
 国倫は唇をへの字にすると、まだ器に残っていた酒を飲み干した。舌に埃の味が残り、顔をしかめた。
 気分がすぐれないのは、妹の出産のせいばかりでなく、寂しいのだとわかっていた。
 紺屋町は染物職人の住む長屋街で、田村邸は長屋ではないもののそう大きな邸宅でもない。初めから、宿舎は自分で確保する約束で門人にしてもらった。ここの寮に入れるまで、好意で置いてくれたのだ。
 田村先生邸へ年始の挨拶へ行くのは明日だ。とにかく今日は、部屋でひとり、酒を飲むか餅を食うかするしかない。
『勉強はしないのですか?』と鳩渓が問うが、聞こえない振りを決め込む。ったく、クソまじめなハトポッポじゃ。元日は何もしないもんじゃ。
『聞こえているじゃないですかっ!』
 機嫌の悪い鳩渓はムキになって怒っている。だいたい下戸の鳩渓は、昨夜の国倫の酒のせいで、声を出すだけで頭が痛んでいた。
『酒は、俺が付き合ってやるさ』と、李山が笑った。
『ガキは無視してりゃいい』
『誰がガキですかっ!』
 李山も退屈なのか、鳩渓をからかって楽しんでいる。三人でよかったと、国倫はこんな時に思う。国倫だけがそう感じるのかもしれない。

「平賀さん、お客様ですよ。玄関でお待ちです」
 襖の外から声がした。寮の部屋は戸板で仕切られただけで、壁ではない。
 襖を開き、「おお、すまんの」と礼を述べる。「いえ」と、若い寮生は数歩あとずさる。寮内では、源内要注意の令が徹底しているらしい。
「杉田様とおっしゃっていました」
「・・・玄白さんが?」
 
 寮の玄関は旅館のように広くなっている。毎朝授業が始まる前にはここを数十名の寮生が出入りするのだ。
「やあ、玄白さん。おめでとうございます」
 白木の床でお互い正座するのも野暮なので、国倫は会釈にとどめた。玄白も年始の挨拶を述べた後、「すみません、元日から。通り道でしたので、寄ってみました。よかったらこれを」と、玄関に置かれた鍋を国倫の方へ押し出した。
「実家で持たされた雑煮です」
 玄白は元旦を実家の酒井下屋敷(牛込)で家族と迎えたが、今日はどこも医者が開いていなくて困る患者もいるだろうと、昼過ぎから医院を開ける為に日本橋へ帰るところだと言う。
「寮の元日は料理人もお休みと聞いていますし、お食事をどうされているかと思いまして。実家が私用に持たせた雑煮で恐縮ですが。お口に合えばいいのですが」
「・・・。」
「国倫さん?」
「玄白さんっ!」と、国倫は両手でばしばしっと客人の肩を叩いた。
「雑煮というのは各家の秘伝中の秘伝、代々伝わる由緒正しきダシ、伝統ある具。それを惜しげもなくわしに食わせてくれようとは、なんと懐の深いっ!」
「秘伝?そんな大層なもんじゃないですよ」
 不思議そうに眉を寄せる玄白に、国倫はにっと笑ってみせた。「ああ」と玄白も納得して、笑みを返した。今のは国倫のジョーク、いや、嬉しかったことの照れ隠しなのだ。
「元日から医院を開けるとは、仕事熱心じゃの」
「今日は助手もいないし、どれだけ診れるかわかりませんけど」
「わしに手伝いをさせて貰えんじゃろうか?」
 源内は内科の医師でもある(玄白は外科)。本草は医学の添え物の風潮はあるが、大坂では旭山の元で本格的に医学も学んだ。
「湯沸かしや薬の調合ぐらいならできるけん。雑煮は、一緒に食わんかね?」
「ああ、そうですね。でも、いいのですか、せっかくお休みのところ」
「退屈でうんざりしておったよ」
 それは、玄白にも、方便でなく本音に聞こえた。源内という男は、停滞していられない気質のようだ。常に何かしていないと気が済まない。のんびりする、羽休めする、という状態は、かえって気が休まらないらしい。
「ありがたいです。お願いします」
 玄白は素直に頭を下げた。
「ちぃと待っときんさい。羽織を持ってくるけん」
 国倫は駆け足で部屋に戻って行く。
 誰かが「平賀さんっ!廊下は走らない!」と国倫を叱る声が聞こえ、玄白はくすりと笑った。

★ 2 ★

 陽が落ちる前に患者は途絶え、玄白は閂を下ろした。玄白が今日から診療を始めたことは口コミで伝わるだろうし、障子から灯も洩れている。急患があったら戸を叩くだろう。
「お疲れさまでした。今日はありがとうございました」と、玄白は国倫に礼を述べ、雑煮の鍋から二つの椀に夕食をよそった。
 仕事を手伝ってもらって肌で感じた。国倫の頭の回転の早さに、玄白はたじろいだ。中川純亭も子供の頃から藩で話題にのぼるほど利発な青年だった。純亭に劣等感を感じたこともある玄白だったが、国倫のそれは、もう玄白の嫉妬の範囲を越えていた。玄白の治療を見て指示の前に薬を作り始めるのが純亭だとすれば、国倫は患者を見た瞬間に作り始める。玄白が何も言わなくても針やメスが出て来て、頼まなくても患者の的確な部分を抑えて補助した。
「江戸は雑煮の汁が黒いから驚きじゃ。餅も四角い。一年たってもまだ慣れん。だが、餅を焼いて入れるのは香ばしくてうまいのう」
 讃岐も大坂も白味噌仕立て、餅は丸餅を煮込むそうだ。口の端で餅をびよぉぉんと伸ばして国倫は陽気に笑っている。国倫の偉いところは、あんまり賢そうに見えないところだと思う。凄い男だとわかっていても、警戒心は感じさせない。
「私は子供の頃、小浜で丸餅を食べましたよ。
 どうしました?急患が来たとしても、もう私一人で大丈夫ですよ。遠慮なく呑んでください」
 国倫の膳に添えられた杯は、一度も空けられない。玄白が酒を飲まないことを国倫はよく知っている。いつもは彼は一人でも気にせず杯を空けるのだが・・・。
「昨夜から呑みっぱなしじゃけん。わしは平気じゃが、鳩渓が二日酔いで機嫌が悪い。これ以上呑んだら雷が落ちる」
「そうですか。鳩渓さんは具合が悪いのですか。年始の挨拶くらいは申し上げたかったですが・・・仕方ないですね」
 玄白は、そう言うと視線を椀の中へ落とした。

 国倫だって、何度も鳩渓に舵を渡そうとした。玄白は鳩渓と一番仲がいいのだ。鳩渓と話したいのを知っている。
 残った酒のせいではない。鳩渓は、里与の件でまだ膝を抱えて俯いている。
「新しい羽織ですね」
 玄白は話題を変えた。衣桁(いこう)に、国倫が羽織って来た紋付がかかっている。今は助手の作務衣を借着していた。
「・・・しがらみが背にまとわり付く羽織じゃ」
「はい?」
 五つ紋の正式な羽織である。背には梅鉢の紋が白く浮く。国倫はにが笑いして、首を振った。
「何でもない。・・・これは、故郷(くに)から送って来おった」
「お母上が?」
「いや」
「では里与さんですか?みごとな仕立てですね」
「妹はそんな余裕は無いじゃろう。赤子の世話で手一杯じゃ」
「・・・。そうですか」
 玄白はそれだけ言って、口を閉じた。出産の祝いも、赤ん坊の性別の問いも、何も言葉にしなかった。鳩渓が引き籠もっている理由も察したのだろう。
「幼馴染みからのものじゃ。大坂で仕立てさせたものじゃろう。わしが見すぼらしい恰好をしているのはすかんと書いてあった。まるで見て来たように言いおる。・・・まあ、反論はできんがの」
 今の国倫にはこんな五つ紋の羽織は必要ない。だが、「すぐに要るようになる」というのが、桃源の考えのようだ。立派すぎて、かえって着物や本人の容貌に不似合いで変だという気がする。この羽織は、李山の気に入っていない。着て出ると奴は機嫌が悪い。だが他に暖を取る上着を持っていないのだから仕方ない。
 国倫はあまり恰好を気にする男ではないが、李山は細かいところにうるさい。玄白が貸した割烹着に似た作務衣も、長身の源内には裄も丈も足りなかった。李山に言われるままに国倫は袖を捲くり、裾も短く折った。それだけで全体のバランスがよくなり、見苦しい印象は消えた。
 裕福な学者の息子なら別だが、一介の書生が季節ごとに着物を新調などできない。町人と同じで古着を買ったり、仕立て直したりする。しかし源内の背だとそれも難しい。遠く大坂で仕立てられた羽織は、丈も裄もぴたりと合っていた。その『幼馴染み』に着物を作ってもらったのは、初めてではない。
「有馬温泉の宿をひと月借り切って送別会をしたかたですよね。いいお友達ですね。本当に国倫さんたちを応援しているのでしょうね」
 玄白の言葉に他意はない。素直な、彼の感想だろう。だが国倫は一瞬箸を止めた。
 国倫には、わからない。桃源が何故自分を援助してくれるのか。才能を認めてくれているからだと思っていたが、大坂でまたわからなくなった。離れて一年以上たつが、今でも答えは出せないでいる。

 有馬温泉での日々は、送別会というより、句会の合宿のようなものだった。このひと月にたくさん句を作って何とか本にしよう、それを三人の記念にしようという計画だった。酒も呑んだし芸者も上げたが、一番は俳句を詠むことに労力が使われた。もちろん子供の頃からの友達であるし、その頃の気分で、旅籠中を使ってかくれんぼや双六で遊んで、女中に叱られたりもした。有馬は楽しかった。いつも三人でゲラゲラと笑い転げていた。
 期限が来て、『有馬紀行』という一冊の句集が完成した。文江は仕事があるのでそのまま高松へ帰り、桃源は大坂まで送ってくれた。

 大坂で、翌朝江戸に向けて発つというその晩の旅館では、二人とも無言で杯を交わした。有馬で馬鹿騒ぎをしたのと同じ者達とは思えぬほど静かだった。お互い、言葉が見つからなかったのだ。
 向かい合わせに置かれた膳の向こう、杯を置いた桃源の手の甲に、ぽとりと涙が落ちた。
 桃源の涙を、国倫はその時初めて見た。いつも国倫の相談には力強い答えをくれた、堂々とした大人の、兄役だった桃源の涙だった。国倫は揺らいだ。断乎とした笑顔で見送ってくれると思っていたのに。桃源がこんな弱さを見せるなんて。
「桃源・・・」
「すまんのう。見苦しいが、ゆるせ」
 桃源は涙を腕で乱暴にぬぐうと、国倫を引き寄せ、そのまま抱いた。拒否する気持ちにはなれなかった。それで桃源の悲しみが和らぐならと思った。
 少年の華奢な体の頃に、桃源に女に見立てられて抱かれたことは幾度かあった。だが、それは若者の性への好奇心と、抑制がうまく効かない欲望の為だと理解して応じていた。
「ずっとこうしたかったが・・・おぬしは藩のものじゃった」
 腕の中で聞いた桃源の言葉には、軽い驚きを覚えた。高松城にずっと勤務していたから、という意味なのか。それとも殿様の恋人だと気付いていたのか。浪人になった今なら、求めてもいいと思ったというのか。だが、桃源を責めるわけにはいかない。彼の好意を、ただの友情だと都合よく解釈していたのは自分なのだ。今まで桃源は、色恋のそぶりも見せず、『いい兄貴分』を演じて来てくれたのだ。
「そうじゃな。ずっと桃源には淋しい想いをさせて・・・そしてまた、わしは、江戸へ行ってしまう。むごい男じゃの」
 国倫は、桃源に恋を感じたことは一度もない。だが、恋人だった玄丈より頼恭より、大切な男だった。子供の頃に、海で泳ぎを教わったり相撲を取ったりして散々触れた肌だ。疎ましいと思うはずもなかった。

 まだ夜が明けぬ時刻に国倫は閨を出た。桃源は背を向けて寝入っている。有明行灯の明かりを頼りに身繕いをし、別れを告げる為に桃源を起こそうと、その背に触れた。
「とうに起きとるよ。目覚めた時におぬしが居んのは、つらすぎるけん」
「・・・。」
 同じことを頼恭に言われた。長崎へ発つ朝に。自分はいつも、大切なひとをこうして振り切って旅立って行く。利用して、踏み台にして、置いていく。
「・・・源内。ゆうべは済まんかったな。別れに感傷的になった。次に会うのは何年後か何十年後わからんが・・・よい兄に戻っている自信はあるけん」
「それは困ったの。わしが江戸で失敗して泣いて帰ったら、抱いて慰めて貰おうと思っとったんじゃが?」
 湿っぽいのは好きではなかった。国倫が冗談で軽口を叩くと、桃源が「あーほ。したら、尻叩いて江戸へ追い返すけん」と強気に返してよこした。
「おぬしが江戸で通用せんわきゃない。それは真剣にやっとらん証拠じゃっちゅうて、な」

 まだ明るさの足りない街道を、国倫は東へ向かって歩き出す。腰には自作の量程器を下げて。暗さが、泣き腫らした瞼を隠してくれるのは有り難かった。故郷が、桃源が、想い出が、胸を締めつけた。
 桃源の、『ずっと藩のものだから遠慮していた』という言葉も切なかった。桃源につらい想いをさせたという胸の痛みと、『そうだ、もう自分は頼恭のものでは無いのだ』と自覚する痛さとで血を吐きそうだった。
 終わったのだ。自分が頼恭を裏切って終わらせたのだ。あんなに自分を認め、愛してくれたひとを。江戸で学びたいというわがままの為に。
 東へ・・・江戸へと一歩一歩踏みしめるごとに、国倫は自分の業の深さを感じた。

「四角くても丸くても、餅は餅じゃけん」
 江戸も上方も同じ日本だ。『自分は通用する』と感じたのは幻想でないと思いたい。成功しなければ申し訳が立たない相手が、何人もいた。
 夕餉の後、玄白に許しを得てから煙管を取り出す。煙管入れに、今は二本の煙管が入っていた。飴色の羅宇の平凡な一本を取り出し、火皿に刻みを詰めた。
「いつも、赤い煙管も持ってらっしゃいますよね。お守りですか?」
「・・・。そんな大層なもんじゃないけん」と、国倫は苦笑した。
「これはもう、ヤニが溜まって使えんのじゃ。羅宇を替えんといかんのじゃが、そういう気になれんでの」
 国倫は、赤い椿の煙管を取り出して玄白に示した。
「確かに。普通の羅宇を取り付けると、価値が無くなりますよね」
「使えんものを、こうして持ち歩いておる。未練がましいことじゃの」
「・・・。」
「昔好きだった男に貰った物じゃ。当時、吉原の太夫に人気があった型だと聞いたが。まことかね?」
「さあ。私は吉原など近づきもしませんし、噂も聞きませんから。
 ただ、羅宇は、掃除してくれる煙管屋もあるようですよ。患者さんに煙管職人のかたがいますので、今度聞いてみますね」
 玄白という男は、掛け値なく親切である。育ちの良さがわかる。そして、余計なことは詮索しない。「自分に関係ない」という気楽さから来る態度かもしれないが、国倫には玄白のこの距離の取り方がとても楽だった。
 鳩渓も、玄白と居ることで、少し心が上向きになっているようだ。相変わらず膝を抱えたままだが、二人のお喋りに時々耳を傾け、くすっと笑ったり頷いたりしている。

「すっかり御馳走になりました。さて、わしは寂しい寮へ戻りますけん」
 国倫はそう言って立ち上がったが、笑顔だった。寂しさはとうに立ち消えていた。明日は藍水のところへ新年の挨拶へ行く。元長にも純亭にも会える。きっと今年の薬品会の話も出るだろう。・・・留まっていると水は腐る。早急すぎると笑われても、国倫は前へ前へと進みたかった。

「羽織を」と、帰り際に背にかけて貰った上着は、もう絡みつく不快感は無く、ふわりと暖かかった。「よもきち!」と高い声で桃源(その頃はまだ桃吉だ)に呼ばれ、背後から「みーつけた!」と抱きつかれた腕の感触に似て。




第15章へつづく

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